みやざきひむか学
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 午前7時30分ごろ。夕ぐれの川岸のやぶの中で、ゲンジボタルが一つ二つと光りはじめます。やがてその光は飛び立ち、午後8時ごろになると川の流れにそって、光りながらとびます。メスはオスより10日ほどおくれてあらわれるので、はじめのころ飛んでいるのは、ほとんどオスです。もっとも活動するのは午後8時30分〜午後9時30分ごろまでのあいだです。
 飛んでいるオスの群れは、一斉に明滅しはじめます。群れが大きいとあちらでボアー。こちらでボアーとまるで声をかけ合っているかのように明滅します。メスは飛ばずに草の上にいます。メスはオスの明滅に光で信号を送ります。少ないメスを探すために、一斉に明滅をしているように見えます。水辺の美しい光景は、自分の子孫を残すためのオスの努力なのです。
 ゲンジボタルの成虫の命は、オスもメスも2週間足らずです。メスはたまごを産みおわると、やがて、ひっそりと死んでいきます。コケの上に産みつけられたたまごは1ヶ月ほどたったむし暑い夜にふ化し、幼虫の水中生活がはじまります。カワニナを主なえさとして大きくなり、次の年の4月ごろに、川のそばの土の中にもぐり、4月下旬にはさなぎとなり、5月下旬に羽化(うか)します。
 


 ゲンジボタルの幼虫は水質にとても敏感ですがヘイケボタルの幼虫は多少汚れた水でも平気なので、川のほかに、流れのない水田にもすみついています。食べものは、モノアラガイやサカマキガイなどです。しかし、農薬の影響等で、どこにでもいたヘイケボタルの方がゲンジボタルよりダメージが大きくなってきています。世界にいる約2000種ものホタルのなかで、幼虫時代に水中でくらすホタルは、この2種のほかに、2〜3種いるだけです。水の豊富な我が国ならではのホタルといえるでしょう。
 


 ゲンジボタルやヘイケボタルが「水辺のホタル」といわれるのに対し、ヒメボタルは「森のホタル」といわれます。幼虫が、カタツムリやオガチョウジガイなどの、小さな陸貝を食べながら、陸上でくらすからです。ヒメボタルは体の割りに、強い光を発光します。オスの群れが飛びながらチカッチカッと光はじめると、メスは草の上にはいのぼり目立つ場所で光の信号を送ります。こうして飛べないメスはオスを呼びよせて、交尾することができるのです。また、メスがあまり移動できないため、今すんでいる場所がすみにくくなったからといって、すみ場所を、ほかへ移すことは、かんたんにできません。それに、幼虫は、1年から2年かかって成虫になります。環境がかわらないこと、そっとしておかれることが、生きていくために、とてもたいせつなことなのです。
 
 こうしてみると、1種類のホタルをへらさないためには、多くの生物とのつながりや環境の保全(ほぜん)が重要であることがわかります。本当の自然の保護とは何か。私たちはこのことについて真剣に考え、地道な活動をつづけていかなければならないと思います。
 

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