「自分の思いを豊かに表現する児童の育成 〜「読むこと」「話すこと」を中心に、「言葉の力」を高める指導の在り方を求めて〜 |
○ 21世紀は、知識基盤社会であると言われる。知識基盤社会とは、政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域で、新しい知識・情報・技術が飛躍的に重要性を増す社会である。これからの社会を生き、21世紀を担っていく子どもたちには、基礎的・基本的な知識や技能をしっかり習得させるとともに、習得した知識を活用して目の前の課題を解決できるような思考力・判断力を身につけることが求められている。しかるに、PISAをはじめとする国際的な学力調査や、我が国で実施されている全 国学力・学習状況調査によると、身につけた知識・技能を実生活の中で活用して課題を解決する問題の正答率が低く、特に与えられた様々なテキスト資料を読み、内容を理解 し、自分なりの考えをもち、それを表現する「(PISA型)読解力」が全体的に低下傾向にあるという。なかでも自分の考えをもち、表現する問いについては無答が目立った。だが、子どもたちの将来においては、与えられた情報を正確に読み取ることだけに終わらせず、その情報を受けた上で、自分の考えを論理的に、そしてわかりやすく伝えることは重要な力であり、このような力は日常生活のあらゆる場面において「生きて働く力」であることから、確実に身につけさせることが喫緊の課題である。
○ このことを念頭に本校児童を鑑みたとき、「一定の答えがあることについては意欲的に発表するが、自分の思いや考えを発表したり、理由を答えたりすることについては消極的であること」「児童の語彙力が乏しいこと」「時と場に応じた言葉遣いや、相手の気持ちを考えた言葉等のコミュニケーションの力に課題があること」などの実態があった。それらはすべて「言葉の力」に拠るところが大きいことから、昨年度は本主題を設定し、文章を読み、それに対する自分の思いや考えをもつことに重点を置き研究を進めてきた。
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一方で、
自分の思いや考えをもつには、児童それぞれの生活体験や環境が影響している。 その生活体験や環境の違い、また、個人差に対応するため、教育活動全体において 体験活動を重視するのはもちろん、国語科では日々の読書による疑似体験や追体験 をより多くさせる必要がある。また、自分の思いや考えを生成する際に必要な語彙力を一層高める必要がある。
という課題も浮き彫りになった。
さらに、自分の思いや考えを表現する(話す)ことについても、技能と語彙に個人差があること。また、人の意見に対して自分の考えを述べる ことに慣れていないことが課題として挙げられた。
○ そこで、本年度は昨年度の研究を継続し、上記の成果を一層充実させるとともに課題の解決を図ることにした。文章を読むことは、その文章 に対する自分の思いや考えをもつことであると子どもたちが明確に認識しながら学習を進める授業を模索する。これまで我々は、読むことの指導においては、書かれてあることを正確に読むことに重点を置いてきた。しかし、文章を読むことは、それだけで完結するものではない。文章に対する自分の「感想(思い)・意見(考え)」を作ることこそ読みの大切な学習である。そこで、子どもたちがそのことをしっかりと認識するために、「読み」と「表現」を関連づけた学習指導を重視する。つまり「話すこと」によって、「読み」は深まると捉え、読んだことに対する自分の思いや考えを表現して伝え合い、自分とは異なる思いや考えを聞き合う「読み」の交流を積極的に図るようにする。そのためには、学習指導過程、発問構成について工夫改善を図っていく必要がある。また、読書活動の一層の充実を図り、語彙力を高める言語活動の具体的な手立てを模索することも重要となる。このような学習活動を展開し、手立てをとる中で、言葉の力が育まれ、自分の思いや考えを豊かに表現できる力が育まれるのではないだろ うか。それは、本校の教育目標である「豊かな心と自ら学ぶ意欲をもち、積極的にねばり強くがんばる児童の育成」につながることになる。