平成22年度 1学期終業式 早いもので、一学期の終業式を迎えました。 「夏休み」と言っても、課外やいろいろな行事が目白押しにあって、皆さんにとっては、小学校までのような嬉しい終業式でないでしょうが、一つの区切りとして、この4か月間を振り返ってほしいと思います。 今年度は、4月末に発生した口蹄疫の感染拡大で、活動にいろいろな制約があるなか一学期が過ぎて来ましたが、県を挙げての取り組みと各方面からのご支援のお陰で、ようやく終息が近づいてきたように思います。大変喜ばしいことです。 私は、始業式で、「一面に水の張った田圃に、早苗が整然と植え付けられているのを見て、1年のサイクルがまた始まったんだなあと思うと、桜の花を観る以上に嬉しい」という話をしました。 その早苗は、今どうなっていると思いますか? 目にしている人もいるかと思いますが、4か月足らずで、もう稲穂が垂れています。時に「雀脅し」の「パーン」という音が聞こえて来ますので、刈り入れも間近です。 なぜ、桜より稲田の方が、見てうれしくなったかと言いますと、 桜は、花の頃の一時で、あとは葉桜ですが、稲は、植えられた早苗が、一雨ごとに成長して行き、たわわに実を付けて穂が垂れ、そして黄金色になって刈り取られる。そのような成長の様がよく分かるからです。 さて、皆さん、この1学期の手応えは、如何ですか。 1年生には、入学にあたって、2つのことをお願いしました。 「柔軟さ、幅の広さを身に付けてほしい」ということと「自分の可能性を探求しつづけてほしい」ということです。 2・3年生には、始業式で、「一流」と「一流半」とでは、どこがどう違うかという話をしました。それは、目標を何が何でもという「決意」として持つか、単なる「願望」でしか持ち得ないかであり、練習を自分で工夫し、人並み以上の努力を継続できるか、人に課せられたノルマとして一応消化するだけに終わるかだと言いました。また、「大宮精神の具現化」と「学びの質の向上」を図ってほしい、というお願いもしました。 そのような点を踏まえて振り返るとき、それぞれの自己評価は如何でしょうか。 全体的に、私がこの1学期に気づいたことを、皆さんの1日の生活に沿って何点か挙げてみます。 ① 挨拶は、「まだまだ」という声もありますが、私は概ねよいと思います。ただ、朝の挨拶など、面と向かえばきちっとできるが、後ろからとか少し離れたところからでも声をかけ合えるとよいと思います。遅刻は少なくてよいが、駆け込みが多く、交差点で飛び出したりして危ないとの指摘があります。余裕を持って登校してください。 ② 読書の推進に取り組んでいますが、1学期は、図書貸出状況が確実に昨年を上回っています。先生方全員に、「読んでほしいこの1冊」を紹介してもらっていますので、是非、夏休みやにその中から何冊かを読んでください。 ③ 「自習時間」が授業時以上に静かなこと。当たり前と言えば当たり前ですが…。 ④ 清掃の取り組み。女子生徒の作業服は形ができていていいのですが、トイレなどの目に見えないところを意欲的にきれいにするという点ではもの足りなさがあります。 ⑤ 傘の立ての傘が、しっかり巻いて拡がらないように止めて立ててあること。誰か、美化委員とかの当番がやっているのかと思いましたが、それぞれが励行しているそうで、大変素晴らしいことです。 ⑥ 生徒会活動の自主性、活発さは県下一です。欲を言えば、第111期総務委員選挙が十数人の立候補があって、選挙が行われると、もっとよかったと思います。 ⑦ 部活動。入部率が全体で83%(1年94%、2年83%、3年72%)ですから、電車通・バス通の人が27%いることを考えると、素晴らしい入部率です。 また、いつも表彰伝達がたくさんあるように、いろいろな大会やコンクールでの成果も素晴らしい。毎朝、ボランティアで、部活の人たちが道路沿いを清掃してくれているのにも頭が下がります。 少し話は変わりますが、 UMKの番組「MIYAZAKI経済ナビ」で、日本のトップ企業で活躍している宮崎県出身者にインタビューする「わが心の宮崎」という特集があります。その番組に、6月、2回にわたって、SBSグループの鎌田正彦代表が登場しました。 SBSグループは、総合アウトソーシンググループで、連結会社が26社、従業員1万2千人、昨年の売り上げが1150億円という、日本の物流業界で、日通、佐川急便、くろねこヤマトなどに迫る勢いのグループのようです。その代表の鎌田さんが、宮崎の若者へのメッセージとして、 「自分の夢を明確に持ってやれば、人生の夢は叶う。思う人ほど、成功に近づける。失敗しても、勝負して人生を切り開いてほしい」と言っておられました。 彼の座右の銘は、自分でつくった「大志大忍」だそうです。 実は、鎌田さんは、延岡の出身で、延岡高校1年生とき、ちょうど私は、大学出たての講師として、彼のクラスの数学を担任していました。今の大宮と同じように、放課後の「居残り勉強」をやっていましたが、そんなとき、よく「先生、聞いてよ!」という感じで、将来の起業(事業を起こす)夢を語っていました。私は、「面白いやつだなあ」と思いつつ、「そんな先のことより、目の前の「因数分解」「因数定理」をクリアせんか」と言いたいのをかみ殺していたのを覚えています。翌年、私は、正採用になって近くの高校に移ったのですが、彼は気になる生徒で、街で同級の生徒に出会った折りに、「鎌田はどうしている?」と尋ねて、「学校からいなくなりました。どこか留学するとか何とか言ってました」と教えてもらったのを思い出します。今回、インタビューを聞いて、そこらあたりの事情がよく解りました。 「大志大忍」とは、大きな志は誰でも持てる、でも、大きく忍ぶことがなかなかできない。大きな志を成就するためには、辛いこと、きついことを堪え忍んで頑張ることが大切だ、ということです。 彼は、大きな志は誰でも持てると言いましたが、「大きな志」を持つことさえなかなかできていないのが現状ではないかという気が、私はします。 札幌農学校でクラーク博士が「Boys be ambitious!」と訴えた頃と比べると、社会に成熟感、閉塞感があり、大志を抱きにくいかも知れません。しかし、いま、少子高齢化や規制緩和、グローバル化などが進んで、解決しなければならない、社会の課題がたくさん顕在化してあります。 今春の宮崎県の中卒者数は、約1万2千人でしたが、昭和38年度の中卒、今年62歳になられる方々は、約3万6千人でした。県の将来推計によると、20年後は、県の総人口は約19万人減少し、65歳以上の割合が36%に達するということです。 19万人と言いますと、西都・児湯と日南・南那珂を合わせた人口、又は、延岡・日向、都城・三股の人口です。それくらいの人口が減るのです。今後、社会の活力をどう維持していくのかは大きな課題です。医師不足、農業の担い手不足など、次代を担う皆さんが目を向けないといけない大きな問題がたくさんあります。人がいっぱいいる都会に逃げ込めば済むという話ではありません。食料自給率がカロリーベースで40%でしかない日本の食の生産地、供給地は、宮崎のような地方です。それなのに、今年の新成人、アンケートで、目前に迫っている「宮崎市長選に関心がない」と答えた人が約74%もいるということでした。若者が、市長選だけに関心がないのではなく、社会のことに関心がないのではないかと気になります。 かつて、旧制高校の学生などの間に流行った「デカンショ節」という歌があります。 「デカンショ、デカンショで半年は暮らす、あとの半年は寝て暮らす」という、ばんカラな歌ですが、「デカンショ」とは、デカルト、カント、ショーペンハウエルを指すそうです。つまり、旧制高校の生徒、昔の高校生は、目が開いていれば、天下国家を論じ、人生を語り、愛とは何ぞや、存在とは? と考えていた。というのです。 皆さんは、中学校で「立志式」があったでしょう。これは、武家社会の「元服」に当たるもので、「大人になる」儀式です。「大人になる」とは、自分のことだけでなく、周りのこと、社会全体のことにも思いを致し、自分の立つ位置を考えられるようになるということです。 高校生活が始まったばかりの1年生、まだ少し余裕の2年生、「さあいよいよ」という3年生、それぞれ、今、私が話をしたことを、自分自身のことに焼き直してこの夏休みを過ごして下さい。 まずは、第34回全国高校総合文化祭をみんなで盛り上げ、大成功に導きましょう。演者として、役員として、又は鑑賞者として、様々な形で参加して宮崎が元気になり、思いで深い大会となるよう、それぞれ頑張ってください。 少し長くなりましたが、以上で、1学期終業式の挨拶とします。
平成22年7月20日 宮崎県立宮崎大宮高等学校 校長 黒木正彦
Modified : 2010-07-22
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