平成26年12月12日(金):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】鈴木章(北大名誉教授)

 10月21日(火)に日南高等学校で開催された、2010年度ノーベル化学賞受賞者の鈴木章北海道大学名誉教授による講演「人類の進歩に役立つ科学の例」は、記憶に新しいところだと思います。 その講演について10月26日(日)の「宮崎日日新聞」に、次のような記事が掲載されましたので紹介します。

 科学者と言えば真面目で研究熱心。 ノーベル化学賞ともなればさぞかし孤高で近づきがたいと勝手に想像していた。 だが日南高であった、同賞受賞者の鈴木章さんの講演は親近感を抱かせるものだった。 国内を代表する科学者の口からまず出たのは研究仲間や恩師への感謝。 そして「失敗は仕方ない。楽観的な方が失敗から立ち直りやすい」との助言で生徒たちの肩の力を抜いた。 難解な化学式が並ぶ研究内容は理解できなかったかもしれない。 だが「どんな分野でも自分で切り開く気持ちが大事」との言葉は全員に響いたはず。 世界の舞台に立つチャンスは誰にでもある。 一人でもそう意識する生徒が出れば講演は成功だ。

 実は講演終了後、校長室前に質問者が殺到して、その場で回答していただく時間がありませんでした。 そこで、鈴木名誉教授に後日回答していただきました。それを紹介します。

■質問1)
 「将来、社会に出て活躍できる研究者になるために必要なことは何でしょうか?」

回答:先ず、立派な研究者になることです。 そのためには、立派な高校生として勉学に励み、自分の進みたい分野の優れた大学に進学し、将来自分の目指す分野に必要な専門基礎を身につけることが大切です。 そのようにして、専門の研究領域に進んだならば、立派な研究者となるためには、次の3つの点に留意することです。
@ 独創的な発想を心掛けているか?
A 小さな光をも見逃さない注意力は?
B 旺盛な研究意欲を持つか?


■質問2)
 「現在、医療や食料、環境等、様々な分野でバイオテクノロジーが発展しています。しかし、多くの問題点があるのも
 事実です。その中でも、遺伝子組み換え技術について、先生のお考えをお聞かせください?」

回答:遺伝子組み換え技術については、私の専門分野ではありませんが、科学のどの分野も人類の進歩のためには、重要なものだと考えます。 それを人類のために役立てるかどうかは、我々の判断に委ねられるものだと思います。 例えばアルフレド・ノーベルのダイナマイトの発見は、人類のためには立派な貢献でしたが、それを殺傷のために戦争に使用したのは、やはり人間でした。

■質問 3)
 「ips細胞の研究、再生医療の研究が進んでいます。鈴木先生は科学者として、今後の医療はどのようになるとお考え
 でしょうか?」

回答:先の回答と同様に私の専門ではありませんが、医学の進歩にも科学の貢献は欠かせません。 この場合には特に、人命が深く関わりますので、最善の注意が必要です。



平成26年10月15日(水):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】県高総文祭等での活躍、後期役員改選、組織の在り方、ロングフェローの詩

おりたちて 今朝の寒さを驚きぬ 露しとしとと 柿の落葉深く
(伊藤左千夫)

 喜望坂近くにある民家の柿の実が、朝日に輝きひときわ美しく感じられるとともに、二十四節季の「寒露」(秋の長雨が終わり、草木に冷たい露が宿りはじめる頃)を過ぎ、上記の短歌が思い起こされます。
 さて、9月27日〜10月4日まで開催された、「第36回宮崎県高等学校総合文化祭」における、ニチナンの生徒の活躍を紹介します。

■弁論部門
 ・1年:長友一心君
  第2位
  (内容は、亡き祖父の彫った置物の由来をきっかけにして、自分の将来の夢を語った、祖父とのかけがえのない絆が
  印象的な弁論)。
  来月の九州大会(福岡県)、平成27年度全国大会(滋賀県)出場。

■美術部門
 ・2年:荒武明日香さん
  特選。平成27年度全国大会(滋賀県)出品。

 ・2年:熊元里奈さん
  準特選。平成27年度九州大会(宮崎県)出品。

 ・2年:福島正顕君
  奨励賞。

■書道部門
 ・2年:宮尾姫菜さん
  平成27年度全国大会選抜賞(滋賀県)。

 ・2年:塔尾ひかりさん
平成27年度全国大会選抜賞(滋賀県)。

 ・2年:田原広子さん
平成27年度九州大会選抜賞(宮崎県)。

 ・1年:永友勇蔵君
  平成27年度九州大会選抜賞(宮崎県)。

 ・2年:酒井怜菜さん
  優秀賞。

 ・1年:伊知地優花さん
  優秀賞。

 ・1年:田中美奈さん
  優秀賞。

 ・1年:中村ちひろさん
  奨励賞。

 また、1年の坂元辰伎君が「宮崎県高等学校家庭クラブ中部地区研究発表大会」に、「Let's eat many foods.〜おおきくなぁれ〜」で出場。 「生後9ヶ月(研究当時)の弟の離乳食が始まり、母親の負担も増加。 また、弟が風邪で体調を崩したことがきっかけで、食欲が落ちて便秘の症状も出てきた。 そこで、離乳食の研究をして実生活に活用することで、母親の負担軽減にもつなげ、家族の絆を深めていく研究」について発表しました。 その結果、優秀賞を受賞し、11月7日に行われる各地区の代表者を集めた大会に出場します。 普通科の生徒が地区代表になることが難しい大会なので、立派だと思います。

 10月2日(木)に後期役員の改選が行われました。生徒の皆さん一人ひとりが、

委員長として、副委員長として、風紀・交通委員として、体育委員として、文化委員として、
保健委員として、図書委員として、美化委員として、家庭クラブ委員として

「母校日南高等学校のために何が出来るか」を意識しながら、それぞれの役割を果たしてもらいたいと願います。
 日本の戦国時代最強と謳われる騎馬軍団を作りあげた武田信玄は、「人は城、人は石垣、人は堀。」というのが信念でした。 彼が居館とした躑躅ヶ崎館の跡は、山梨県甲府市にありますが、訪れてみると、「信濃、駿河、上野、遠江、三河などを勢力下に収めた有力大名が、こんな脆弱な防御施設しかない所に住んでいたのか。」という感慨に襲われました。 信玄は、「どのような堅固な城にも勝るもの、それは各個人がそれぞれの能力、特質、才能などを思う存分に発揮することなのだ。」と考えていたのだと思います。
 組織というものの寿命について、「60年から70年で、組織は疲弊する。」と司馬遼太郎は記しています。 よどんだ水が腐るように、「これまでは、この方法で何とかなっていたから、別に変えることもないだろう」という安易な前例踏襲の悪弊や、「○○については誰にも注意されたり、指導されたりしていないから構わないんだ」と思っていい加減に済ませてしまう等によって、組織というものは活力を失っていきます。 やはり、集団にとってのポイントは、「人」、マンパワー(各人の頭脳、能力、特質、才能など)なのだと、つくづく思います。 表面上はどんなに素晴らしく見える組織でも、内実が問題だらけでは何の価値もありません。 結局はその組織の中にいる一人ひとりがどのような人物なのか、そこに尽きると思います。
 日南高等学校の校是である「エクセルショー」は、アメリカの詩人ロングフェローの「Excelsior 」という詩から取られています。 その一部を紹介します。

The shades of night were falling fast,
As through an Alpine village passed
A youth, who bore, ’mid snow and ice,
A banner with the strange device,
Excelsior! (Poetical Works 19)
夜影すばやく落ちぬ,
若人ひとり雪氷の中,
見知らぬ図柄の旗もちて
アルプス山脈の村越えしときに,
エクセルシア(もっと高く) !

 これは、『ディケンズ・フェロウシップ日本支部年報』第26号(2003年11月)の「‘エクセルシア’考―ディケンズとロングフェローの一接点―」(寺内孝)から引用したものです。
 ニチナン(日南高等学校)を構成している皆さん一人ひとりが、「エクセルショー」の旗を掲げて、どれだけポジティブであるか、学級役員として「日南高等学校のために何が出来るか」を意識してどれだけ前向きになれるか、そこに今後の日南高等学校がかかっているのです。期待しています。



平成26年9月22日(月):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】ボランティア活動、部活動等の活躍、旅、人生の旅、卒業生からの手紙

■8月24日(日)の早朝、飫肥城観光駐車場と南郷町総合支所の2箇所で行われた「みんなでボランティア」(清掃活動)に参加した生徒を紹介します。 先日、主催者側(日南市社会福祉協議会)から感謝の意を表した文書が届きました。
 ・飫肥城観光駐車場
   32HR 秋山(花)さん、佐藤さん
   33HR 秋山(優)さん、井野さん、田中さん、田端さん、林さん
   34HR 北村さん、黒木さん、高橋さん、竹平さん、谷口さん、コ永さん、山本(花)さん
 ・南郷町総合支所
   32HR 酒井君、伊地知さん
   33HR 日高(七)さん、藤井さん、安田さん

■陸上の新人大会が9月12日(金)〜14日(日)に行われ、4種目で九州大会に出場することになりました。 九州大会での飛躍を期待したいと思います。
 【男子】
 ・4×100mリレー
  古川君(2年)、早田君(2年)、村冨君(1年)、内田君(2年)
 ・4×400mリレー
  束元君(1年)、村冨君(1年)、早田君(2年)、古川君(2年)
 ・100m
  早田君(2年)
 【女子】
 ・走り高跳び   山下さん(1年)

■18日(木)に宮崎県高校英語弁論大会が開催され、暗唱の部(37人参加)で、2年久保君が3位に入賞しました。

 「遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休めるとき、遙か雲海の上を音もなく流れ去る気流は、たゆみない宇宙の営みを告げています……」
 これは、私が大学生時代にエフエム東京(当時)で聞いていた、城達也の名ナレーションによって世界各地を紹介する音楽番組「ジェットストリーム」の冒頭の言葉です。 BGMとして流れるフランク・プゥルセル・グランド・オーケストラによる「ミスター・ロンリー」が旅情を誘い、私はまだ行ったことのない異国の地に思いを馳せたものです。

若いときに旅をせねば老いての物語がない。 

 この言葉は、「地蔵舞」(内容:宿を断られた旅僧が、まず笠だけ預けて帰ると見せかけ、こっそりとその笠の下に入り、笠に宿を借りた。宿主が笑って許したので、興にのった僧は、地蔵の様子を滑稽に表現した舞を舞う)という狂言の中にあります。
 私はかつて、ノーベル賞作家の川端康成『伊豆の踊子』で主人公が歩いた道をなぞったり、松尾芭蕉の『奥の細道』の足跡をたどったり、森鴎外の生家跡を尋ねたりと、文学作品の題材となった地を中心に旅をしていました。 若い時の旅とそれについての思い出は、貴重な財産になっています。
 この「旅」を、「人生という長い旅」と理解することもできるでしょう。 人生という旅でも、若く感性豊かな時に様々の経験をしておくことは大事だと思います。
 さて、今春本校を卒業し宮崎県立看護大学に進学した永井衿佳さんから、近況を知らせる手紙が来ましたので紹介します。

 拝啓
 初秋の候 校長先生にはますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、この度は突然のお手紙申し訳ございません。私は、平成26年に卒業した永井衿佳です。 今回は在学中のお礼と御報告をかねて、お手紙を差し上げました。
 宮崎県立看護大学に入学してから、はや半年になりました。 大学は高校と違うことが多く大変ですが、最近では慣れてまいりました。 授業では、看護師になるために必要な技術、知識から、大人として必要な知識など様々なことを学んでいます。 英語や化学、物理など高校の時に学んだものや宇宙についても学んでいます。 宇宙や化学、物理を看護学生に教えているのは宮崎県立看護大学ぐらいなのだそうです。 しかし、この授業も私達が看護をするためには必要なものだと授業を受けて分かりました。 特に物理では、患者さんの部屋の空気を心地良い温度でどのように換気するかなど、看護師として知っていたら役に立つことが学べました。 看護技術は、血圧測定やベッドメイキングなど少しずつ修得しています。
 サークルにも参加しています。 吹奏楽を続けたかったので吹奏楽サークルに入り、日々練習しています。
 これからも、自分の夢に向かって努力したいと思います。
 最後になりましたが、日南高等学校の更なる発展と御活躍を心よりお祈り申し上げます。

敬具


 永井さんは手紙の中で、看護師になるための様々な経験を積むことの楽しさ、素晴らしさ、大切さを述べています。 人生という旅では、道に迷うことも多々あります。 しかし、宮崎県立看護大学での経験は、自分の居場所をきちんと認識させてくれて、きっと実り豊かなものを永井さんの人生に与えてくれると、私は確信しています。



平成26年9月8日(月):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】バドミントン部・野球部の活躍、エクセルシア祭後の全校集会、秋の七草

 部活動の活躍の様子を先ず紹介します。
■バドミントン部
 ・8月3日(日)「いづみや杯」ダブルスBクラス準優勝
  …1年橋口綾太君、2年吉浦正也君
 ・8月8日(金)〜10日(日)「宮崎県1年生大会」ダブルス:ベスト8
  …1年杉尾亮太郎君、橋口綾太君
 ・8月8日(金)〜10日(日)「宮崎県1年生大会」初心者の部:ベスト8
  …1年杉尾亮太郎君

■野球部
 ・「宮崎県高校新人野球大会」で宮崎学園を破りベスト4
 全国の部活動において活躍している部を見てみると、恵まれた施設と豊富な練習量を確保できるから優れた成績を上げることが出来るとは、必ずしも言えません。 そして、創意工夫によって時間を捻出し、素晴らしい結果を残している部には爽やかさを感じさせられます。 本校生徒も限られた時間をどのように有効に活用するかを考えながら、上記に挙げた部に続いて活躍してほしいと思います。

 さて、9月3日(水)、エクセルシア祭後の全校集会が行われました。 その中の、新しく赴任したALTからの話と進路指導部長・生徒指導部長の話とを紹介します。
 新しく赴任したALTは「アレックス」先生と言い、カナダから来日しました。全校生徒に向けて、

 日南高等学校で英語を教えること、そして、皆さんとお話しすることをとても楽しみにしています。 私が日本に来たのは、日本の芸術と文化にとても興味があるからです。 私のカナダの文化と、皆さんの日本の文化の素晴らしさを伝え合えたらいいなと思います。 よい2学期を過ごしましょう。 

という内容のお話をされました。
 進路指導部長は、別の学校で教えた生徒を例に挙げて、

・自分の力を見極めて、今何をしなくてはならないかをしっかりと押さえてがんばってほしい。
・自分の居場所は自分でつくるしかない。

と激励しました。
 また、生徒指導部長は、

・行事を通して、いろいろな経験を積むことで成長していくものであること。
・日南高等学校は時間を大切にする学校であってほしいので、「時間厳守」を合い言葉としよう。

と、具体的に守るべき3箇条を示して話しました。2人とも、生徒に対する信頼にあふれた語り口でした。

 朝夕虫の(すだ)く音に秋の気配を感じます。 春に七草があるように、秋にも「秋の七草」がありますが、これは、万葉集を代表する歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)が二首の歌に詠んで以来、親しまれるようになりました。

  秋の野に 咲きたる花を 指折(およびお)り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
(『万葉集』1537巻8)

  意味:秋の野にとりどりに咲く花を、指を折りながら一つひとつ数えてみると、七種類の花があります。

  萩の花 尾花 (くず)花 なでしこの花 女郎花(おみなえし) また藤袴 朝顔の花
(『万葉集』1538巻8)

意味:朝顔は、桔梗のことと言われています。

 なお、一首目は、「五・七・五・七・七」の短歌で、二首目は、「五・七・七、五・七・七」の旋頭歌と言われるものです。
 生徒の皆さんには、時間を有効に使って充実した日々を過ごし、実り豊かな秋にしてほしいと願っています。



平成26年8月20日(水):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】季節観

 「宮崎日日新聞」の「宮日文芸」(平成26年8月4日)に、

台風が近付いて来る海辺より潮の香りが舞い上がり来る (杉田蓬子:日南市)

という短歌が掲載されていました。 選者の荒巻和雄氏の、「風田の浜に波高く打ち寄せて砕ける逆白波を思わせて十分である」という評が添えられています。 今夏、台風襲来で、課外や対外模試のスケジュールに影響が出ましたが、今後しばらくは注意が必要かもしれません。 「逆白波(さかしらなみ)」は歌人である斎藤茂吉の造語とも言われていますが、彼の代表作に「最上川(もがみがわ)逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」というのがあります。 いかにも茂吉らしい万葉調の調べです。
 さて、7月24日〜25日に行われた「宮崎県高等学校美術実技講習・コンクール」において、2年の高砂倉葵さんが「平面構成の部」で優秀賞、同じく2年の福島正顕君が「基礎素描の部」で優秀賞を受賞。 8月10日(日)に行われた「宮崎県高校ソフトテニス2年生大会」で2年の井戸川結衣さんと長友美咲さんペアが準優勝。 また、19日(火)に行われた油津中学校の「卒業生の声を聴く会」で、3年の谷あすかさんが堂々と発表してくれました。 また、27日(水)には、全国高等学校総合文化祭茨城大会の書道部門で特別賞を受賞した3年の木島綾美さんが、宮崎県教育長を訪問し、入賞の報告を行います。
 さて、本日から2学期が始まりました。 今学期はエクセルシア祭、センター試験願書記入、無限会、教育課程説明会、修学旅行等、たくさんの行事が目白押しです。 こうした行事の多い中でも、季節の移ろいには敏感であってほしいと思います。 季節の変化に目が向くと、「時間」の大切さが身にしみてくるのではないでしょうか。 兼好法師の季節観を紹介します。『徒然草』155段で、

 春暮れて(のち)、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。 (中略)木の葉の落つるも、先づ落ちて芽ぐむにはあらず、下より(きざ)しつはるに堪へずして落つるなり。
[口語訳]
 春が終わって後、夏になり、夏が終わってから秋が来るのではない。 (中略)木の葉が落ちるのも、まず木の葉が落ちて、それから芽が生じるのではない。 木の内部から芽がきざし、その勢いの進むのに堪え切れないで、木の葉が落ちるのである。

と述べています。私は高校時代にこの箇所を読んで、ある季節の中に既に次の季節の萌芽があるのだという兼好法師の着眼の鋭さに感動を覚えましたが、年齢とともにますます惹かれる部分です。 時代が変わっても色あせない、古典のすごさを感じさせられます。
 「行き合いの空」という言葉があります。 夏の暑気と秋の涼気とが入り混じった空のことです。 体育大会の予行で見上げた空に、入道雲に混じって鰯雲が浮かんでいるかもしれません。 兼好法師は188段で、こうも言っています。

 世を長閑(のどか)に思ひて打ち怠りつつ、先づ、差し当りたる、目の前の事にのみ紛れて、月日を送れば、事々成す事なくして、身は老いぬ。
[口語訳]
 一生は長いものだと思って、つい油断をして、とにかく直面する目の前のことだけに心を奪われ、どのことも完成することがなくて、我が身は老い込んでしまう。

 移りゆく季節を感じながら、一瞬一瞬の「時」を大切にしつつ、「モア・エクセルショー」精神で勉強に部活動にと、充実した日々を送ってほしいと願っています。



平成26年7月28日(月):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】愛情の音、3年の伊地知澄加さんの文章

 カラ、カラ、カラ〜朝、喜望坂の途中のT字路になった場所に立っていると、生徒が通るたびによくこの音を耳にします。 その音の正体は、水筒の中に入っている氷の音です。私はこの音を聞くたびに、「保護者の方の愛情の音」だと感じています。 教室に冷房が入っているとはいえ、昼食時に、少しでも快適に食事をさせたいという親心に思いを馳せるのです。
 カラ、カラ、カラ〜この音を聞くうちに思い出した短歌があります。

朝に見て昼には呼びて夜は触れ確かめをらねば子は消ゆるもの
(河野裕子)

 さて、次に「小村寿太郎侯顕彰弁論大会〜国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール〜」に応募した、3年の伊地知澄加さんの文章を紹介します。

 みなさんは見たことがありますか。手足のない人が物乞いをする姿、道行く人に裸で土下座をしてお金を貰う人、同情をひいてお金を貰うために赤ちゃんを連れた人、まだ10歳にも満たないのに物乞いをしている子ども…
 父の仕事の関係でタイで生まれ育った私は、物乞いをする人を初めて見た恐怖心を一日も忘れたことはありません。 ある人はコップを前に置き地面に座り込んでいました。 何よりも怖かったのは、その人が虚空を見つめたまま全く動かずにいたことです。 そして、周りの人々は、まるでその人がいないかのように全く気にもとめていませんでした。 次の日もその人はいましたが、三日目にはいなくなっていました。 その人が、生きていたのか本当はなくなっていたのか、怖くて泣いていただけの私には分かりませんでした。
 これはタイだけではなく、東南アジアを中心とした発展途上国の深刻な問題の一つ、物乞いビジネスです。 物乞いビジネスでは、障がいを持った子どもが、お金を稼ぐための道具として扱われ、食事もままならず不衛生な環境下で過酷な生活を強いられています。 タイの一日の平均収入は300バーツで、日本円で1020円。 物乞いで手に入る一日の収入は300バーツから1000バーツ。1020円から3400円です。 それだけの収入があれば生活環境もよくなるのでは、と思いますが実情は全く違います。 物乞いで得たお金は、ほとんどそれをさせている元締めの人に回収されているのです。 タイは熱心な仏教国で、障がいを持って生まれたということは、前世で悪い行いをしたという考えが一部の農村部でまだ残っています。 お金を稼ぐために、障がいのある人をお金で買い、わざとポリオに感染させ手足を不自由にさせたり、レンタルして売買された子どもを連れて同情をひくために目立つ場所に立たせたりするのです。 そこで売買されている子どもの多くは、カンボジアから不法入国させられたといいます。 人が人を売買し、わざと手足を切断し、病気にさせ、彼らをお金を稼ぐ道具として使う…こんなに悲しく、残酷な非人道的なことが許されるわけありません。 しかし、現実に起こっていて、人権を無視された生活を今日も明日も送っていくかもしれない人が大勢いるのです。
 この深刻な問題を解決するためにはODAによる金銭面や技術面での援助が必要不可欠です。 ODAの長期にわたる援助により、タイの生活環境は格段に上がりました。 交通環境も整い、首都は日本にも負けないくらいの都市になっています。 しかし、首都を中心に都市化が進んでいるだけで、農村部は未だに十分な生活環境ではありません。 また、技術協力により水道整備が整っていない地域へ井戸を作り、そうした援助で多くの命が救われてきました。 きっと今も誰かの命が救われているでしょう。しかし、それはほんの一部です。 世界にはこのタイのように、宗教上の理由や慣習により人権が軽んじられたり、性別によって社会的地位が低かったりする国がまだ残っています。 そして学ぶ機会や、働く機会が奪われている人がいます。 こうした人々に人として当たり前の生活が出来るよう、日本は伝えていくべきことがあると思うのです。 ODAの経済援助や技術支援だけではなく、考え方や思想の面について「人間は等しく平等であり、学び、生きる権利がある」ということを。 そうした考え方を共有する機会を作っているのは、国際連合です。
 理不尽な差別に苦しむ人々、いつ手足を奪われるか分からず恐怖におののく人々をそうした闇の中から救うのは、武力ではなく、経済援助や技術支援です。 そして、もし私が国連事務総長なら全世界に共通した「対話による救済」のシステムを確立したいです。 世界には今も想像を絶する生活の中で苦しんでいる人が大勢います。 現状を知っている人だけではなく、もっと多くの人に真実を知って欲しいです。 そして苦しんでいる人々を国連や政府だけではなく、世界中の人々が一体となり「対話による救済」を実行したいです。 私は一人一人の協力により世界中の人々が輝く社会を作っていきたいです。

 私は、伊地知さんの文章を読んで、タイの都市と農村の格差から派生している政情不安の根本的な部分を理解することができたように思います。 若い時代に様々な体験を積むことの大切さを、改めて思い知らされました。



平成26年4月10日(木):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】エクセルショー、カイヅカイブキ、論語、「今日も元気で力一杯」

 本日は、日南高等学校の入学式でした。新入生を迎えて新年度が本格的にスタートです。
 次に、「平成26年度合格者のしおり」に載せた学校長挨拶を紹介します。

 合格おめでとうございます。突然ですが、今、皆さんに求められている力は何だと思いますか。 それは、変化の激しい現代社会において、その変化を読み取る「力」です。 日南高等学校では、その変化を読み取るために欠かせない幅広く普遍的(※すべてのものに当てはまるよう)な「知」を学ぶことができます。 日南高等学校の校是(※学校設立の根本精神を表す言葉)は、「より高く!向上しよう」という意味を持つ「EXCELSIOR(エクセルショー)」です。
 日南高等学校の正門横にある常緑樹カイヅカイブキがきれいに選定され、あなた達の入学を待っているところです。 その一方、落葉樹のイチョウはさっぱりとしすぎた状態で、私の目には寒々しく映ります。 『論語』(※今から約2500年前の中国の思想家・孔子、その弟子、同時代人などの言行が記録された書物で、東アジア最大の古典)に、「歳寒、然後知松柏之後凋也。」という有名な言葉があります。

[書き下し文]
(とし)寒くして、(しか)(のち)松柏(しょうはく)(しぼ)むに(おく)るるを知る。」
[口語訳]

「気候が寒くなってから、はじめて松や柏の木の葉が、(他の植物の葉が枯れ落ちる中で)枯れないで残ることが分かる」。

 これは、「困難に耐えて志を変えないことのたとえ」として使われます。 同義の言葉に「疾風(しっぷう)勁草(けいそう)を知る」があります。
 日南高等学校は、平成26年度で学校創立94年目を迎える、南那珂地域そして宮崎県における伝統校です。 2万6千人を超える卒業生は、精神的にも肉体的にも疾風怒濤(どとう)(※変化が激しく大きく変わる様子)の3年間を、校是である「EXCELSIOR(エクセルショー)」を支えとして過ごし、自分の進路目標を達成してきました。 在校生も、今を有意義なものにしようと一生懸命に取り組んでいます。 皆さんも4月から、その一員としての生活が始まります。
 さて、日南高等学校の正門を入ったところに「今日も元気で力一杯」の石碑があり、裏面に次のように彫られています。

生徒諸君
われわれは 昨日から今日へ そして又明日へと 人生の長い旅路を急いでいる
一生涯を よりよく生きるためには 目標を 高く掲げて
自分の道を 歩かなければならない
その道は 苦難の多い はるかにはるかに 遠い道なのだ
今日も元気で力一杯 頑張ろうではないか
昭和41年7月 学校長 山義盛

 私は、最後の「今日も元気で力一杯 頑張ろうではないか」という箇所(かしょ)に、山義盛第7代校長の、生徒に寄せる強い信頼・寛い心を感じます。 4月から、皆さんが「今日も元気で力一杯」に日南高等学校で勉強に部活動に励み、グローバル化が進む社会の変化を読み取るために必要な幅広く普遍的な「知」を身につけて、南那珂地域そして宮崎県のリーダーとなってくれることを期待しています。



平成26年2月7日(金):日南高等学校長 坂本一信

 【キーワード】寒立馬(かんだちめ)、推薦入学者選抜検査、若き日の小村寿太郎侯、浜口雄幸(はまぐちおさち)

東雲(しののめ)に勇みいななく寒立馬 筑紫が原の嵐ものかは(岩佐勉)
※寒立馬 青森県下北郡東通村尻屋崎周辺に放牧されている馬。
厳しい冬にも耐えられるたくましい体格の馬で、青森県の天然記念物に指定。
※ものかは 強い反語を表す。嵐に弱ってしまうだろうか、いや、そのようなことはない。

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 2月6日(木)、宮崎県立高等学校推薦入学者選抜検査が本校で実施されました。 立春が過ぎたとはいえ、小雨が降り気温があまり上がらない中、検査会場に向かう受検生の姿を見ていると、吹雪の中に(りん)と立つ「寒立馬」のことが想起されました。 人生にはいくつかの節目がありますが、高校入試もそのような節目の一つです。 私は、受検生一人一人が持てる力を発揮してほしいと願わずにはいられませんでした。
 さて、小村寿太郎侯奉賛会の企画により、『小村寿太郎-若き日の肖像-』(小村寿太郎侯伝記本編集員会、平成25年11月26日初版発行、鉱脈社)が出版されました。 この本の中に、寿太郎侯が6歳か7歳で振徳堂に入学した当時のエピソードがあります。

 振徳堂は明け六つ(午前六時)に門が開き、先着順に素読の授業を受けられました。 向学心旺盛な寿太郎は真っ先に登校しました。(中略)
 祖母は早朝、夜も明けきらぬうちに起きて支度をととのえ、寿太郎を送る毎日でした。 特に冬などはまだ暗いので提灯をともさなければなりませんでした。 こうして門が開く前に着くと寿太郎の機嫌が大層よかったそうです。

 また、「不遇時代は人生最大の準備期間」と題された中では、

 寿太郎にとって明治十七年頃から同二十六年までは、文字通り人生最大の不遇時代でした。(中略) しかし、自暴自棄に陥ることなく、日本の将来に関わる問題を見いだし、さらに研究を続けます。

と記されています。 寿太郎侯にとって運が悪く才能にふさわしい境遇になかった時期、吹雪に見舞われたような辛く厳しい時が、実は外交官として大成するまでの準備期間だったのです。 小村侯と同様に、不遇時代に絶望することも腐ることもなく情報収集に努めて識見を広げた人物として、浜口雄幸がいます。 彼はライオン宰相と呼ばれましたが、興味のある人は城山三郎の『男子の本懐』を呼んでください。 この本は、第一次世界大戦後の慢性的不況を脱するために、多くの困難を克服して、昭和五年一月に断行された金解禁を遂行した浜口雄幸が、いかにして一つの政策に生命を賭けたか、人間の生きがいとは何かを描いています。 余談です……私が日南高等学校の生徒だった時に、『総会屋錦城』で第40回直木賞に輝いた城山三郎と、『(きぬた)をうつ女』で第66回芥川賞を受賞した李恢成(りかいせい)の講演会が本校で行われました。 城山三郎について、小柄だけれどエネルギッシュな人という印象を持った記憶があります。




平成26年1月21日(火):日南高等学校長 坂本一信

 日南高等学校の正門の向かいにある、第29回卒業生の植えた台湾寒緋桜の蕾が少しずつ少しずつ膨らんでいます。

「生まれる」は受身形だねといふ詩に吾子が腹蹴る否とばかりに(松下なち)
はいという挨拶をする子どもらの目に強い意志が耀いている(原隆祐)

 上の2首は、「宮崎日日新聞」(平成26年1月20日)の「宮日文芸」に掲載された短歌です。  1首目は子どもに対する深い想いが感じられ、2首目は素直で強い意志を持つ子どもを讃える内容となっています。  また、歌人の俵万智さんは、

腹を蹴られなぜかわいいと思うのか よっこらしょっと水をやる朝

 と詠んでいますが、本校では子どもに対する保護者の方々の情愛に思いを致しながら、日々の教育活動を行っているところです。
 さて、人は出会うべき時に、出会うべき人や物事に出会うものである、というのは本当のことではないでしょうか。 人も仕事も、みんな何らかの意味を持って出会っているのだと思います。 そのような出会いによって進路を決めた、本校の3年生を紹介します。
 3年生の金丸和佳奈さん(南郷中出身)は、宮崎県と宮崎県看護協会が主催している「ふれあい看護体験」に参加して、実際に現場で働く看護師・助産師・保健師の話を聞いたり、患者さんとふれあったりして医療の現場の一面に触れました。 そして、次のような感想を抱きました。

日南高等学校 3年 金丸 和佳奈

 私は、幼い頃から看護師の母の姿を見て育ってきました。 私も母のような患者のために全力を尽くす看護師になりたいと、次第に思うようになったのがきっかけでこの看護体験に参加しました。
 今回の看護体験は、愛泉会日南病院でお世話になりました。 病院に着くと、たくさんの看護師の方々が笑顔で出迎えてくださり、緊張が一気に解けました。 私が担当になった病棟は、重症心身障害児病棟でした。 過去の看護体験では一般病棟だけだったので、とても不安を覚えました。 いざナース服に着替え病棟に入ると、私が見てきた院内の環境とは全く異なっていました。 たくさんの声にならない声が聞こえ正直戸惑ったし、不安な気持ちが強くなりました。 しかし、自分の受け持ちの患者さんと過ごすうちに慣れてきて、気持ち的にも余裕が出てきました。 脈拍や血圧測定では聴診器や手動で行う測定器具を用いて測ることができ、とても勉強になりました。 一番印象的だったのは食事介助です。 私の受け持ちの患者さんは、歯がないため固形のものは食べられないのでミキサー食でした。 実際に少し味見させてもらうと何とも言えない味がしました。これも貴重な経験でした。  普通の病院ならば、言葉と言葉のコミュニケーションで気持ちは伝え合えるけど、重症心身障害児の患者さんとはそれだけではコミュニケーションはとれません。 手や身体を触ったり、散歩したり、一緒の時間を過ごすことで、たとえ障害があるとはいえ、必ず伝わるものがあると思います。
 今回の看護体験で、たくさんの病気と闘い今を懸命に生きている患者さんの姿にとても元気をもらったし、改めて看護師になりたいと思いました。

 このように「看護師になりたい」という強い希望を持ち続けている金丸さんは、宮崎大学医学部看護学科の推薦入試に見事合格しました。 今春4月から、自分の夢に向かって新たな一歩を踏み出します。 金丸さん本人の強い意志もさることながら、看護師をされているお母さん、看護体験で御指導くださった愛泉会日南病院の方々等の導きにも大きな影響を受けたことが、感想文からうかがえます。 人は出会うべき時に、出会うべき人や物事に出会うものである、というのは本当だと実感させられる文章でした。
 冒頭に書いた台湾寒緋桜は、もう少しすれば冬の厳しい寒さに耐えたものだけが見せることのできる美しい花で、我々の目を楽しませてくれることでしょう。




平成25年12月3日(火):日南高等学校長 坂本一信

日の色をちりばめ銀杏落葉降る(鈴木とし子)

という俳句がありますが、日南高等学校グラウンド脇のイチョウが朝日に映えて大変美しい季節となりました。
 さて、11月23日(土)の午後、日南市文化センターで「第3回日南市民主張大会」が開催され、私は豊饒なひとときを過ごすことができました。 この大会は日南文化芸術協会が、「少子高齢化が加速し、世代間格差等の社会変化が生じる中、日南市の老若男女が集い、主張し、世代間の相互理解を図り、住みよいまちづくりをめざす」、という趣旨のもとに主催している弁論大会です。

■高齢者の部(65歳以上)   ■青壮年の部(一般64歳以下)   ■高校・専門学校の部   ■小・中学校の部

の4部門に分かれており、「高校・専門学校の部」に、本校1年の日高絵美梨さんが出場して素晴らしい発表をしてくれました。
各年代の主張とともに、アトラクションの「おおぞら園と寿太郎侯音頭保存会の踊り、リトルエンジェルDCのダンス」も印象に残りましたが、私がこの大会で様々な世代の主張を聞きながら感じたことは、

 現代の若者はコミュニケーション能力が弱いと言われるが、責任は若者にあるのだろうか。 中高年世代が若者と話す機会が減っている事もその一因ではないだろうか。 まず、世代をこえた人の言うことを聞く機会を数多くつくることが大切だと思う。 そういう点で、この日南市民主張大会は世代間の溝を埋める場として意義のある大会だ。

ということでした。
 また、青壮年の部で「凛々しく・輝く未来へ」という演題で発表したTさんは、自分の命を削りながら日本舞踊を教えてくれた踊りの師匠への感謝を述べました。 実はTさんの日本舞踊の師匠、鍛錬してきた技をこれから大輪の花として咲かせようとしていた時に亡くなった、その師匠のSさんは、私の日南高校での同級生でした。 気丈で凛とした雰囲気を持っていたSさんの高校時代の姿が蘇ってくると同時に、彼女の思い・願いがお弟子さんにしっかりと受け継がれていることに対して、教えるということでは同じ立場の者として、私は聞きながら涙が出てきました。

 唐の詩人賈島は、「僧は推す月下の門」という句が浮かんだとき、「推す」がいいのか、これを改めて「敲(たた)く」にしようかと迷い、唐宋八大家の一人と言われた詩人韓愈に教えを請うています。 そして結局、「僧は敲く月下の門」としたとされています。(中略)私たちの人生は、詩人賈島の悩みにも似て惑いの連続する旅です。 私たちは、(中略)、それぞれの人生を幾たびも振り返り、振り返りしつつ練り直していかなければならないように生まれてきている。 いわば、人生を推敲しつづけなければいけない。私はそんなふうに思います。

『講演集 遠い航跡』(M里忠宜、南方新社、平成25年5月20日)


という文章がありますが、私は、諸先輩方の御助言や畏友の協力を得ながら人生を推敲しつつ、素晴らしい可能性を秘めている日南高校の生徒達への教育活動に、今後さらに邁進していこうと意を新たにしました。

 次に、日高さんの弁論の内容を載せます。 発表後に私の周囲では、「今発表した日南高校の生徒は堂々としていたね。内容も素晴らしかった」という声が何人もから聞こえ、「高校・専門学校の部」優秀賞に輝きました。 なお、日高さんの文章を、本校サイト内の「中学生の皆様へ」にも掲載しています。

経験したことから
日南高等学校 一年生 日高絵美梨

 「あぁ、楽しかった!!」サーフィンをして海からあがったあとにみんなが口にする言葉だ。 私の通っていた中学校では、総合的な学習の時間にサーフィンをしている。 これは全国的に珍しい授業だろう。 私は最初、サーフィンの楽しさが分からず、好きになれなかった。 しかし、ある方から言われた「授業でサーフィンできるなんてうらやましい。幸せだね。」という言葉で私のサーフィンに対する思いが変わった。 それからというものサーフィンを通して海が大好きになった。 海岸を通る時はいつも海の様子を見てしまう。
 海は一回として同じ様子を見せない。 波が高いとき、低いとき。 透き通っているとき、にごっているとき。 波が全く見えないときもある。 私はそんな海が大好きだ。 自然に囲まれた環境に住んでいる今、私は幸せを感じている。
 大好きな海に住んでいる生物、ウミガメ。 私はウミガメの保護活動をしたことがある。 砂浜にウミガメの足跡がないかを探し、あったら卵の位置を探し掘り出す。 その後、安全なふ化場へと持っていく。 そしてふ化場で誕生した子ガメを海へ放流する。 一回に放流する子ガメは約百匹。その中で生き残れるのはほんの数匹だ。 私は放流するとき一匹でも多く大きくなってこの海に戻ってくることを願っている。 しかし、そんなウミガメは私たちの捨てたゴミが原因で減少している。 サーフィンをしていても思う。 砂浜になんでこんなに多くのゴミが捨ててあるのだろうと。 サーフィン授業の一環としてゴミ拾いもした。 大量のゴミを拾ってもしばらく経つとまた捨ててある。 ビニール袋をクラゲと間違えて食べ、喉につまらせて死んでしまうウミガメ。 そんなウミガメが私たちの行為によって一匹でも減っていればいいなと思う。
 ウミガメの減少の原因として地球温暖化もある。 社会的な問題としても話題になっている地球温暖化。 地球温暖化が与える影響はすごいと思う。 北極や南極の氷が溶け、海面上昇し、沈む島だってある。 また、生態系を崩すこともある。 ウミガメの保護活動を行うにあたっても、地球温暖化の問題に直面する。 地球温暖化の大きな原因は人間にある。 大量の二酸化炭素の排出だ。産業が発達し、人間の生活が豊かになったことはとても素晴らしいことだ。 しかし、それと同時に地球に悪影響を与えたことも事実だ。 最近、夏が異常に暑いと思う。 五年後、十年後、百年後…。地球はどうなっているのだろうか。 私たちの子孫が住みやすい地球が残っているだろうか。 いや、残さなければならない。地球温暖化を完全に止めることは不可能に近いだろう。 でも、進むことを少しでも遅らせることは可能である。 人間によって起こした問題は、人間が解決しないといけないと思う。
 私たちにできること。地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量を少しでも減らすこと。 使用していない電化製品のコンセントはぬく、電気はこまめに消す。 よく考えてみれば小さいことだが、改善できることがたくさん見つかると思う。 ウミガメを守る為にも、将来を生きる人の為にも、私は小さいことだが意識している。 土日は明るいうちに勉強をしたり、冷蔵庫の開け閉めを早くしたり、レジ袋はもらわなかったりなど本当に小さいことだ。 一人がすれば小さいことだが、日南市民が、宮崎県民が、日本国民が、世界中の人が意識して行動すれば莫大な力になることに間違いない。
 私が大好きな海、ウミガメ、家族、友人、先生方。共通していることは、全てが地球に存在しているということ。 地球がなければ、今私たちは存在していない。地球のおかげで笑ったり泣いたり怒ったりけんかしたりできる。 生きていくことができる。そんな地球を大事にしなくていい訳がない。みんなの手で守る。この地球という一つの惑星を。


「エクセルショー」への旅 「エクセルショー」からの旅

 平成25年4月、40年ぶりに母校に戻ってきました(昭和49年3月、日南高等学校卒業)。どうぞ、よろしくお願いします。
 本校は、大正10年に設置された飫肥中学校を濫觴(らんしょう)とし、爾来、90有余年の歴史と伝統を誇る高校です。 この間、2万6千5百余名の方々がこの学舎を卒業され、宮崎県内はもとより、国内外の各方面で活躍されています。 学校近くには桜の名所として有名な竹香園、ポーツマス条約を日本全権として調印した小村寿太郎侯の像があり、学習環境に大変恵まれた丘の上にあります。 私事ですが、教室の窓から見る竹香園の桜の美しかったこと、友人と小村侯像の下で将来のことを語り合ったこと等が懐かしく思い出されます。
 さて、本校は現在、1学年普通科4学級(うち1学級は、今年度新たに設置された探究科学コース)、2学年普通科5学級、 3学年普通科5学級が設置され、462名の生徒達が、「エクセルショー(より高く!向上しよう)」という校是のもと、日々学業に、 そして部活動等において、自分という壁に全力を尽くしてチャレンジしています。
校長
坂本 一信
@ 県南の教育文化の中核たる普通科高校として、校是の「EXCELSIOR(より高く!向上しよう)」という精神を育成する。
A 確かな学力と基本的生活習慣を身につけさせるとともに、地域に根ざし、地域の期待に応えられる 学校を目指す。
B 生徒の可能性・適性に目を向け、生徒一人一人に応じた的確な進路指導を推進する。

という教育方針のもと、

@ 基礎学力の定着を図る。
A 自律的に行動できる生徒を育成する。
B 心身ともに健康な生徒を育成する。
C 保護者との密な連携を図る。
D 生徒一人一人に応じた指導のあり方を研究する。
E 広報活動を充実させ、生徒募集戦略の充実を図る。

この6つを今年度の重点目標として、教職員一同、目の前にいる生徒一人一人に、無限の知的興味を持たせ、新鮮な驚きを与えられるように努めています。
 今年度当初、私が生徒に話したことは、
    
 競争心は他の人が相手なので、人との軋轢を生んでしまう。しかし、向上心は自分が相手なので、他の人との葛藤は生じない。エクセルショーの精神を大切にしてほしい。

 この1年、苦しいことや困難なことが出てくるかもしれないが、その時は、「どのような人でも、いつも100%のコンディションで、仕事ができるわけではない。どこかに故障や悩みを抱えながら、全力を尽くすのが人生である」という、ネルソン・マンデラ南アフリカ共和国元大統領の言葉を思い出して、励みにしてほしい。

等でした。
 今年度の教職員と生徒の合い言葉は、「モア・エクセルショー」。
保護者並びに同窓生の方々とベクトルを同じにして、本校がもっともっと向上していく姿を、90有余年の伝統の新たな1ページとして刻んでいきたいと思います。