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@ 学習指導要領の改訂について

ア 改訂の経緯

 我が国の社会は,国際化,情報化,科学技術の発展,環境問題への関心の高まり,高齢化,少子化等の様々な面で大きく変化しており,これらの変化を踏まえた新しい教育の在り方が問われている。
 
平成87月,中央教育審議会第一次答申において,これからの学校教育の在り方として,[ゆとり]の中で自ら学び自ら考える力などの[生きる力]の育成を基本とし,次のようなことが提言された。

 
  教育内容の厳選と基礎・基本の徹底を図ること
    一人一人の個性を生かすための教育を推進すること
    豊かな人間性とたくましい体をはぐくむための教育を改善すること
    横断的・総合的な指導を推進するため「総合的な学習の時間」を設けること
  学校完全週5日制を導入するこ


 平成107月,教育課程審議会の答申では,幼児児童生徒の実態,教育課程実施の状況,社会の変化などを踏まえつつ,完全週5日制の下,[ゆとり]の中で「特色ある教育」を展開し,幼児児童生徒に[生きる力]を育成することを基本的なねらいとし,次の方針に基づき改訂することを提言した。


 
   豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること
    自ら学び,自ら考える力を育成すること
  ゆとりある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を  充実すること
    各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること

 これらのねらいに基づき,教育課程の編成,授業時数,各教科等の内容の改善方針が示された。
 この答申を踏まえ,平成1012月に学校教育法施行規則を改正するとともに,完全学校週5日制の下での教育課程の基準である新しい学習指導要領が告示された。新学習指導要領は平成1441日から全面実施となる。


イ 改訂の方針

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「豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成することについて

 道徳教育や特別活動等におけるボランティア活動や自然体験活動などの体験的な活動の充実,道徳教育における低学年の善悪の判断や社会生活上のルールなど重点的な指導の工夫,障害のある幼児児童生徒や高齢者との交流の推進,第3学年からの保健学習の導入など心身の健康に関する教育の充実,社会科における人物,文化遺産中心の歴史学習の徹底などの改善を図っている。

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「自ら学び,自ら考える力を育成すること」について

 多くの知識を教え込むことになりがちであった教育の基調を転換し,児童に自ら学び自ら考える力を育成することを重視した教育を行う必要がある。

 各教科及び総合的な学習の時間において体験的な学習や問題解決的な学習の充実を図らなければならない。例えば,国語科では自分の考えをもち論理的に表現する能力の育成,社会科では事例を選択した問題解決的な学習,理科では見通しを持った観察・実験,算数科では作業的・体験的な活動など算数的活動を充実するなどして,考える力,表現する力の育成を重視しなければならない。


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「ゆとりある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を充実すること」について

 完全週5日制を円滑に実施し,生涯学習の考え方を進めていくため,時間的にも精神的にもゆとりのある教育活動が展開される中で,児童が基礎・基本をじっくり学習できるようにするとともに,興味・関心に応じた学習に主体的に取り組むことができるようにする必要がある。

 児童が学習内容を確実に身に付けることができるよう個別指導やグループ指導,繰り返し指導,教師の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図らなければならない。


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「各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること」について

 児童一人一人の個性を生かす教育を行うためには,各学校が児童や地域の実態等を十分踏まえ,創意工夫を存分に生かした特色ある教育活動を展開することが大切である。



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A 総合的な学習の時間のねらいについて

ア 趣旨

 各学校は,地域や学校,児童の実態等に応じて,横断的・総合的な学習や,児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。

 各学校が創意工夫を生かした特色ある教育活動を一層展開できるようにするための時間を確保する必要があり,自ら学び自ら考える力などの「生きる力」をはぐくむために,既存の教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習を円滑に実施するための時間を確保する必要がある。

イ ねらい

 自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。
    学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること。


 自ら課題を見つけ,自ら学び自ら考え,問題を解決する力などの「生きる力」を育てること,また,情報の集め方,調べ方,まとめ方報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付け問題解決に向けての主体的,創造的な態度を育成すること,自分の考えや意見をもったり,自分のよさに気づき,自分に自信をもったりするなどして自己の生き方について考えることができるようにすることをねらいとしている。
 また,総合的な学習の時間は各教科等で身に付けられた知識や技能を相互に関連付け,総合的に働くことを目指すものといえる。学校で学ぶ知識と生活との結びつき,知の総合化の視点を重視し,各教科等で得た知識や技能等が生活において生かされ総合的に働くようにすることが大切である。そして,総合的な学習の時間で身に付けた力を各教科等において生かしていくことが大切であり,各学校では,総合的な学習の時間と各教科等の指導計画の有機的な連携に配慮する必要がある。

総合的な学習の時間

各 教 科

学び方の学習
知的総合力の育成
教科書がない
教科の枠を超えた学習,今日的な課題
数値的な評価をしない

教科の内容,知識や技能の習得
応用,活用能力の育成
教科書がある
系統的な学習
通知的な評価を行う


ウ 学習活動

 例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題
 児童の興味・関心に基づく課題
 地域や学校の特色に応じた課題

 各学校において,総合的な学習の時間の趣旨やねらいに即して適切に行えばよく,例示にあげられた活動を全部行わなければならないものではない。また,総合的な学習の時間の名称は各学校において親しみやすい名前を適切に定める。

エ 展開にあたっての配慮事項

 体験的な学習,問題解決的な学習の重視
 自然体験やボランティア活動などの社会体験,観察・実験,見学・調査,発表・討論,ものつくりや生産活動など体験的な学習や問題解決的な学習を積極的に取り入れる。

○ 学習形態,指導体制,地域の素材,学習環境の積極的活用
 グループ学習や異年齢集団による学習,地域の人々の参加による学習や地域の自然や施設を積極的に生かした学習などの多様な学習を工夫する。教師も一体となって指導に当たる。

オ 評価

 教科のように試験の成績によって数値的に評価することはせず,活動や学習の過程,報告書や作品,発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて,児童のよい点学習に対する意欲や態度,進歩の状況などを踏まえて適切に評価することとし,例えば指導要領の記載においては,評定は行わず,所見を記述することが適当である。

○ 評価の方法として考えられること


 ワークシート,ノート,作文,絵,レポートなどの製作物
 発表会や話し合いの様子
 児童の自己評価や相互評価
 活動の状況や行動の観察
 家庭や地域の人からの連絡


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