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 「LAN構築と宮崎のネットワーク事情」
「週間教育資料」645〜647に掲載分を加筆修正(2000.1)
OA等事務改善研究委員会委員長 亀澤克憲
   教育情報化の指針

平成11年、12年に教育情報化に関する答申や報告が相次いで出された。
中央教育審議会や教育課程審議会等の答申、あるいは「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」(以下協力者会議)、バーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト」(以下情報化プロジェクト)などの報告がそれである。 特に教育情報化については協力者会議や情報化プロジェクトの報告は今後の計画を詳細に示しており、参考になる。

それを読むと2005年(平成17年)を目指して、すべての教室からインターネットアクセスができるようにすること、そのインターネット接続の高速化を図ること、またすべての教員がコンピュータを活用できるようにすること、地域や民間企業の協力を得て学校の情報化をサポートすること、関係省庁・民間が連携して質の高い教育用コンテンツを開発すること、「教育情報ナショナルセンター」を整備することなどが提示されている。

その中でも特にコンピュータの利用環境としてネットワーク化は不可欠の要件となっており、今後校内LANを含むネットワーク環境が急速に進むことが予想される。

   校務・学校事務の情報化

中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」の柱は、@教育行政の分権化、A学校の自主性・自律性の確立、B教育行政や学校運営への住民参加の3本であった。いわば学校の創意工夫を凝らし、地域全体で子育てを支援していく取組みが提唱されていた。

「生きる力」や「ゆとり」「心の教育」を含め、これらの答申や報告に対して学校事務職員の立場から何ができるのかが今問われている。先の協力者会議や情報化プロジェクトの報告にも、校務・学校事務の情報化について触れられている個所がある。 社会や時代の変化とともに今日学校事務が扱う分野は広範囲に及んできており、そこで取り扱う情報も増え、学校の窓口としての情報管理は重要な意味を持ってきた。今後、ネットワーク化が進めば、必然的に情報一元化、共有化の要としての役割が学校事務職員に担わされてくるであろう。

宮崎の事務研究組織でもこれまでネットワーク時代を想定し、教育活動の充実に資する情報管理と組織の在り方について研究を重ねてきた。その基本は教育目標達成のための情報化と組織化であり、単なる事務負担の軽減にとどまらず、蓄積された情報を積極的に活用する仕組みや組織体制確立の提唱であった。

それが確立してこそ生徒一人ひとりの個性や特徴にあった学習指導や生活指導が可能となり、その情報活用が適宜に適切により効果的に行なえるようになる。そのようなデータベースの蓄積活用があってはじめてネットワークが生かされてこよう。

そのためにはデータベースソフトによるシステム開発が必要であり、時間や手間や費用がかさむ。しかしそのための計画や予算化は報告書にもあまり記されてはいない。現状で推移すれば、ネットワークも単なるファイル共有や電子メール利用、Webページ閲覧の段階で止まってしまう恐れがある。

学校事務における業務処理はもともと電算化しやすく、また生徒情報等基本となる情報が入力されているため、教育指導面への活用も提供しやすい立場にある。またその他多くの情報が入手しやすい立場にもある。そこにこそ、ネットワーク時代を向えて学校事務職員の役割と責任があるように思われる。

   総合行政ネットワーク

一方、地方自治体レベルでも情報通信ネットワーク化が進められている。
「総合行政ネットワーク構築に関する調査研究」(自治大臣官房情報政策室)の報告書によると、行政事務の効率化・迅速化、住民サービスの向上と併せて全国的な情報通信網の確立に向けてネットワークの共通仕様化が検討されている。恐らく各地方自治体においても、防災LAN等を含め情報環境の推進と整備が急ピッチで進められていよう。

宮崎でも「宮崎県新高度情報化推進大綱」にもとづき、財務会計オンラインとは別に県庁LAN・WAN計画が施行され、学校も含めて行政レベルでのネットワーク化が進められている(2000年9月に「宮崎情報ハイウェイ21構想」として発展)。

この流れのなかで事務研究組織では、電子メールの積極活用やデータベースによる事務の効率化に加えて、学校と本庁での仕事の再配分(集中と分散)や権限委譲などの検討を提案している。

しかしここでもデータベース用のシステム開発が必要になってくる。学校側でデータベースソフトを使って作業を行っても、それが本庁と連動していかなければ、事務の効率化は難しい。どんなにメールソフトを充実させたとしても、折角のネットワークがあまり生かせないことになる。機器整備や構築費用に加えてシステム開発に対しての財政的な支援がどうしても必要である。

学校事務は行政情報や教育情報がクロスしそれを集約整理できる立場にある。情報化プロジェクト報告では、またホームページの開設などを通して保護者や地域の人々が時間に拘束されずに情報を得て学校運営に参画し、そのことで学校のアカウンタビリティも明確にできるとしている。保護者や地域住民への情報提供を担うなかで、組織の円滑な機能や学校の活性化につなげられるのではないか。その中心的な役割を担える立場に学校事務職員はある。

   「OA化」のあゆみ

宮崎では早くから事務職員の研究会組織を中心に事務の「OA化」が取り組まれてきた。
厳しい地方財政のため、少ない事務職員でいかに効率的に事務処理を行なうかが課題であったからである。 平成4年度からの盲ろう養護学校での就学奨励費電算化はそのための第一歩であった。並行して生徒、文書、勤務、職員、図書、私費会計等17本程の事務処理システムを開発し、県全体としても統一した処理ができるように研究が進められてきた。

その開発の際に考えられた視点は次のようなことであった。@事務作業の流れを見直し、関連する分野も視野に入れながら総合的に事務の効率化を図ること。A学校毎に行われている個別の事務作業をマニュアル化し統一したものにすること。さらにB将来的な情報量の増大、複合化を見越しネットワーク可能なシステムにすること。

それらの視点を基に当初は現場の事務職員がシステム開発をしていたが、次第にシステム修正の要望が高度になり、またバグ修正やサポートに時間を取られるようになったため、その後、民間業者に委託するようになった。しかしあくまで研究会組織が中心となり、学校現場からの意見を吸い上げ、ある程度柔軟性をもたせながら学校種の違いにも配慮したより実態に即したシステム開発に力を注いでいる。

校内のネットワーク環境についても当初から構想されていた。それは事務室が所有する情報を学校全体のものとすることで、教員の事務負担軽減はもとより、生徒一人ひとりに応じた細やかな指導に生かせないかという発想があったからである。 校内LANについては平成8年度頃より試験的に数校で独自に開設し、また事務室や職員室だけでの簡易LANを敷設する学校も増えてきている。しかし昨今の財政難や指導者不足で単独事業では思うような広がりは見せていない。

   校内LANによる効果

しかし、今後急速に校内LANが普及することが予想され、これまでの取組みの成果が問われることになってきた。その観点を簡単に触れておきたい。

一つは校内組織の流動化である。現在各校務分掌や学年、教科毎に行なっている個別処理や蓄積情報を一元化することによって、組織間の関係や流れをスムースにし、全体として同じ教育目標に向かって機能する体制を築き上げることである。

二つ目はゆとり時間の創出である。情報の共有化や業務処理の一元化は作業時間を短縮させ、事務負担の軽減につながる。結果として教職員の時間確保を可能にする。ゆとりの時間は教材研究や生徒との触れ合いにいくらでも振り向けることができる。

三つ目は個に応じた指導の広がりである。生徒の様々なデータが蓄積されているので、各種統計調査や参考資料をもとに各分野においてきめの細かい指導が可能となる。

四つ目は状況判断や意思決定の的確さである。生徒情報はもとより保健室利用の実態や部活動の状況、学校行事予定表、各種調査統計資料等を検索や閲覧することによって学校全体の動きを把握することができる。そのためより的確な状況判断や意思決定が効率的に行われるようになる。

校内LANの成否はそれを管理運営する組織にかかっている。校務分掌間のバランスや、各部門での業務内容、達成状況などを理解し、その時々の変化に応じて対応できる組織構成が望まれる。

   校内LAN設計の視点

そのような効果を得るために、当初考えられたシステム設計は次のようなことであった。
@ユーザーの利便性 初心者や専門的知識のない職員が簡単に扱われるようにするために、画面の表示を見やすくし、操作も簡単にできるようにすること。そのためにはアイコン(絵文字)やウィザード(操作手順)を用いたり、バーコードやデジタルカメラ、スキャナなどを利用して生徒や図書データ等の入力作業を簡単にすること。

A情報の一元管理と有効活用 学校内の情報の共有化と蓄積を図り、基本となる生徒情報を始め各種情報を一元的に管理し、検索や閲覧、編集を通して、業務処理上必要なデータが適時に取り出せるようにすること。 また校内情報に加えてインターネットを利用することで最新の情報を入手し、データベース化した情報を教材その他として生かせるようにすること。 これら各種情報を利用して管理部門での判断や意思決定についてレベルアップ、スピードアップが図れるようにすること。

B機密性の保持 ネットワーク上には生徒の個人情報を始め様々な情報が混在しており、特に教育用と業務用の区分けやアクセス権の設定が大事となる。これらの情報が本来の目的以外に利用されたり、成績や保健データの不正改ざんや漏洩がないように機密性の高いものとすること。 具体的にはユーザー名やパスワードを確認して部外者の侵入を防いだり、利用者または所属する部門毎にフォルダやファイル単位でのアクセス権を設定したり、不定期にパスワードを変更するなどして堅牢なセキュリティを持ったものとすること。

C将来性と柔軟性 OA機器の進展は日進月歩であるが、折角予算をつけるのであれば、数年先までは障害なく使用できる整備とすること。将来取り扱うデータは画像や音声など大容量を要するデータが増えるため、それに耐えられる装置や通信速度とすること。

また普通教室やパソコン室等異なる機種であっても同じネットワーク環境で扱えるようにすること。障害対策を充分に講じ、トラブル時への早期復旧等信頼性の高いものにすること。加えて社会や時代の流れによって変化する教育内容にも、柔軟に対応できるシステムにすることなどであった。

   ネットワークに関する課題

しかし現実には予算やシステム設計、職員の研修不足等でまだ一部校内LANにとどまっている。稼動してまだ日が浅いが、ネットワーク管理を通して見えてきた課題を三つ程整理しておきたい。

一つ目はネットワーク管理の問題である。
日常的に種々の要因でサーバ機にアクセスできない、ファイルが見れない、メールが送受信できない、クライアント機が異常終了した、プリントアウトできない等々、突発的なトラブルが後を絶たない。しかしこれはネットワークでは必ず起り得る問題だと考えた方がよい。

組織として校内にネットワーク委員会は必要であるが、種々のトラブル処理はできるだけ外部発注とした方がよい。トラブル処理の修復作業は結構時間がとられ、これに教職員があたっていると本来の教育活動がおろそかになりかねない。

迅速に対応できる専門業者との保守管理契約が是非必要である。その予算化が当面無理な場合は、隣接する学校間でネットワークを組み共同で運営管理にあたるとか、あるいは民間ボランティアや大学情報センターなどに依頼することなども考えられる。ただ、学校の仕組みや内容がある程度理解できないと校内LANの運営管理は難しい。今後、それらを研究する機関や組織が必要になってくるであろう。

二つ目はデータ漏洩や不正アクセス等セキュリティ問題である。
どんなに堅牢にセキュリティをかけても、抜け道(セキュリティホール)はある。コンピュータウィルス同様これは永遠の課題であろう。ただ、セキュリティと利便性とは相反するものである。どのようなセキュリティポリシーを持たせるか、ネットワークの目的とガイドラインを明確にする必要がある。

インターネットアクセスについては各県とも教育研修センター等がプロバイダとなってファイアーオールやフィルタリングをかけている。ただ、トラフィック(データ量)の増大も含めて小学校段階から高等学校までを一元管理することには無理があろう。したがって、校内LANのなかでも独自に対策を講じる必要がある。しかし、これもネットワークをどのように使うかによってその対策は異なってくる。特に職員用と教育用など異なるネットワークを接続させる場合、どこで区分けするか、どのようなアクセス権を持たせるか、その利便性との関連で充分検討する必要がある。

三つ目は情報モラルの問題である。
著作権保護や個人情報保護、ネチケット等マルチメディア時代を向かえてますますそれらに対する認識が求められている。研修内容ではどうしても操作や仕組みが先行し、情報モラルは後回しにされがちである。また学校現場では著作権の許容される範囲が広いだけに、特に生徒を教える立場にある教員がまず認識を高めないとその影響は大きい。認識レベルの低さからセキュリティポリシーもむしろ内部ユーザーから壊されるケースが多いと聞く。

今後これらの課題に対する研究は進められていくであろう。ただ公私ともに自覚的に研修時間を確保する必要がある。技術習得と並行して認識を深め、明確なガイドラインやシステム設計、啓発活動を確立してこそ豊かなネットワーク社会を築くことができる。

そのネットワークは結局、人と人とのつながりである。常に個々の教職員や生徒の存在を意識して取組むことが成功のカギとなろう。 学校内外の人や情報の集まる事務室は、それだけでネットワークの中枢部にいることになる。それを生かした柔軟な思考と発想、教育への関わりが学校変革の起爆剤にならないとも限らない。

具体的なLAN構築については「校内LANリンク集」を参考にしてください。


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