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平成17年度 第44号から |
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薬物乱用、ひきこもり、リストカット、不登校、いじめ…現代の子供たちの抱える問題は様々で、年々深刻なものとなってきている。そのような子供たちを目の前にした時、もしも私だったら何ができるのだろうか。おそらく私なら、「何してるの
! ? そんなことはやめなさい ! ! 」と強く怒ってしまうと思う。または、何も言えないかもしれない。しかし、この本に出てくる夜回り先生は、「いいんだよ」と彼らの過去と今を認めてくれる。そこが、子供たちが夜回り先生こと水谷先生に心を開く理由なのだと思った。
この本には、水谷先生が経験してきた数々の実話が載せられている。先生が救うことができた生徒の話や、中には残念ながら救うことのできなかった生徒の話もあった。子供たちが非行に走ってしまうのは、自分の存在を誰かに認めてもらいたいから、孤独という苦しさや寂しさから少しでも逃げたいからなのだと思う。
「子供は被害者だ」と水谷先生は言う。「どんな子供でも、花の種と同じで、親や学校の先生、地域の大人やマスコミを含む社会すべてが、大事に大事に育てれば、必ず美しい花を咲かせるのだ」と。子供に非行をさせるのは、周りの環境や大人たちに問題があるのだ。だから水谷先生は一度も、子供を激しく叱ったり、殴ったりしたことがないのだそうだ。自分は病気を抱えながら、それを後回しにしてでも子供たちを救おうとする、そういった使命感や、水谷先生の子供たちへの想いがひしひしと伝わってきた。ここまで生徒の事を理解し、必死になってくれる先生と、話をしてみたいと思った。
私はこの一冊を通して、水谷先生から「生きる」ということの大切さを学んだ。この世に生まれたくて生まれてくる人間はいない。両親も、生まれ育つ環境も容姿も能力も自ら選ぶことはできない。しかしそれでも、人は生きなくてはならないのだ。では、人が生きていく上で必要なことは何だろうか。それは数え切れないほどたくさんあるだろうし、個人個人でも違ってくると思う。しかし、一つ共通して言えるのは、人は一人では生きられないということだと思う。そして何より、自分の弱さを見せることができる、信頼できる相手や心安らげる場所が必要なのではないだろうか。私には今、信頼できる友人もいるし、安心して過ごせる家もある。三度の御飯は当たり前で、趣味を楽しむ余裕もある。こんなふうに笑顔でいられる毎日を、もっと大切にしなければと思った。そしてもし、私の周りに孤独を感じている友達がいたら、その子の寂しさを理解してあげられるような、そんな人間になりたいと思った。
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